デザインの舞台裏:MARVEL SNAP

Apple Design Awardsを受賞したゲーム、MARVEL SNAPスタイルのアートワークのコラージュ。

MARVEL SNAPは、トレーディングカードゲームの世界を完全にリブートしています。

このゲームには、驚くべきビジュアルやバラエティ豊富なゲームプレイのマルチユニバース、そしてシンプルかつ画期的な「スナップ」メカニズム(double or nothing bet:勝ったら2倍、負けたらゼロの賭け)などが盛り込まれています。マーベルの代表的キャラクターからディープなキャラクターまで網羅するコレクションは、まるで百科事典。でも、マーベルユニバースの知識やトレーディングカードゲームの経験がなくても参加できます。また、タッチ操作が非常に直感的でスピーディなゲームなので、モバイルプレイに最適です。

MARVEL SNAPのメインプレイ画面のスクリーンショット。ゲームボードにはスパイダーマンやワスプ、エレクトラなどのキャラクターカードが3つのロケーション(ノヴァローマ、ニューヨーク、ワカンダ大使館)で表示されています。

MARVEL SNAPは、Ben Brode氏とHamilton Chu氏によって考案されました。2人は、2014年の発売でトレーディングカードのジャンルを再定義することになったHearthstoneの立案者でもあります。2018年、この2人は大きな志と、それよりもさらに大きな問題を抱えながら、独立スタジオ「Second Dinner」を立ち上げました。「これといって何もアイデアがなかったんです」と笑うのは、スタジオのチーフディベロップメントオフィサー、Brode氏。「新しい自分の職場で席について、とにかくゲームを思い付かないといけないのに、アイデアが浮かばない、というのは少し恐ろしいものです」。

写真:Ben Brode(Apple Design Awards受賞ゲーム「Marvel SNAP」クリエイター、Second Dinner studio創設者)。

Brode氏とChu氏は、行き詰った創造力を解き放つために、手あたり次第にボードゲームをプレイし始めました。「そんな窮地からSNAPは生まれました」とBrode氏は説明します。そして、この経験がこのゲームを定義することになるブレークスルーにつながりました。Brode氏はこれを「Chuの天才的なアイデアだった」と語ります。「彼がこう言ったんです。『ねえ、バックギャモンのダブリングキューブを取り入れたらすごく面白くなると思わない?』と」(Brode氏)。「試してすぐに、手ごたえを感じました」。

そこからの展開は速いものでした。2人はマーベルと契約を結んでいたため、まずはマーベルがなぜそれほど特別なのかについて考えることにしました。「つまるところ、ヒーローと悪者の対立だよね」とBrode氏は続けます。「数々の敵をなぎ倒していくのではなく、1対1の睨み合いという勇壮なもの。その答えが出たときに2人とも思いついたんです。『そうだ、カードゲームにしよう』と」。2人は、名刺の裏を使ってSNAPゲームの原型を数ラウンドプレイし、わずか2日間でゲームの骨格を作り上げました。

写真:名刺の裏にペンでキャラクター名やパワーが書き込まれた、ごく初期のアナログ版MARVEL SNAP。

ゲームの骨格の構築はスピーディでしたが、イテレーションにはずっと長い時間がかかりました。それから4年間、Second Dinnerはゲームをプレイし、手直しを加え、部分的にシンプルにもしました。「正直なところ、ゲームをシンプルにすることよりも、複雑な部分の深みを最大限に引き出すことのほうが重要でした」とBrode氏は回想します。

一方、SNAPは、1種類のカード、3つのロケーション、6回のターンから成る、非常にシンプルなゲームです。カードの種類やロケーションに関するルールは簡単で、バトルはものの数分で終わります。

しかし、これらの基本的な要素が組み合わさることで、無限に近い複雑さと、完璧に調整されたバランスを持つゲームとなるのです。「ほとんどの人はランダム性を誤解し、尺度と捉えています」(Brode氏談)。「でも、ランダム性の機能は決してそのようなものではありません。SNAPでは同じようなゲーム展開が繰り返されることはなく、ゲームのたびに『今回はどうやったら勝てるんだろう』と考えなければなりません。ランダム性とスキルが交錯しているのです。そして、もし負けたとしても、どうすべきだったのか、振り返ることができます」。

SNAPでは同じようなゲーム展開が繰り返されることはなく、ゲームのたびに『今回はどうやったら勝てるんだろう』と考えなければなりません。ランダム性とスキルが交錯しているのです。

Ben Brode(MARVEL SNAPクリエーター)

このゲームは言葉でも、プレイヤーの心をしっかりとつかみます。たとえば、SNAPで撤退することは、必ずしも敗北を認めることではありません。ロスを最小限に抑えるための判断の場合もあるからです。「自分の戦略として身を引くと決めたのであれば、それは負けではありません!」とBrode氏は語ります。そのため、撤退したプレイヤーの画面には「撤退」と表示されます。負けるより、よほど受け入れやすい結果です。「『撤退』ならネガティブな感情はゼロになります」。

コミックの原作にふさわしく、SNAPはビジュアルで楽しむゲームです。ゴーストライダーがチェーンで捨て札を引き寄せて対戦に戻したり、デビルダイナソーがボードを揺さぶりながら吠えたてたり、キャラクターごとに個性的なアニメーションが楽しめます。60fpsの設定も可能で、ハルクのスマッシュを信じられないほどの滑らかさで見ることもできます。相手を「スナップ」するだけでも、劇的な光のショーと触覚のフィードバックが得られます。

数十人のマーベルキャラクターが登場するMARVEL SNAPのデッキのスクリーンショット。

SNAPには、当然トップクラスのアベンジャーズも含まれていますが、決してゲームの最重要人物ではありません。ブルーマーベル、ミスター・ファンタスティック、ミスティ・ナイト、エンチャントレスなど、聞いたこともない、あるいは聞いたことはあっても久々にその名前を耳にするようなキャラクターも大当たりを引き寄せたりするのです。Brode氏は、知名度の低いキャラクターを紹介することは、より多くの人にアピールする戦略の一環であり、同時に自身がコミックに没頭した時代を振り返ることでもあったといいます。(当然ながら、このゲームの制作スタッフにもお気に入りキャラはあります。アートディレクターのJomaro Kindred氏はブラックパンサーの大ファンで、プロデューサーのGareth Ackerman氏はアーマーに猛烈にはまっているそうです)。

このゲームは、コミックファンではない人のためのコミックゲーム、トレーディングカードの対戦という言葉を聞いたこともないような人のためのトレーディングカードゲームです。そして何よりも素晴らしいのは、あらゆる年齢のプレイヤーにアピールできているということです。「今週、ウェールズの5歳の子どもから新しいロケーションの提案がありました」とBrode氏。「その子の両親が、『家族で一緒にプレイするのですが、ゲームとキャラクターを通して、息子は数字や算数を学んでいます』というメモを添えて転送してくれました。これほどやりがいを感じられ、嬉しいことはありません」。

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デザインの舞台裏は、Apple Design Awardsの各受賞者がどのようにデザインを実践しているか、またその哲学を探っていくシリーズです。各ストーリーごとに、賞を獲得したアプリやゲームのデベロッパやデザイナーが、どのようにしてその素晴らしい作品に命を吹き込んだのか、その舞台裏を覗いていきます。

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